
企画写真展『アジア漂流』
生粋の香港人アラン・レイ(黎俊華)さんと、じっくり飲茶をしてしまった。飲茶とは、喫茶店とレストランの合いの子、中国式スナックの点心を食べながら、気軽に新聞を読んだり、居合わせた人と世間話をしたりするコミュニケーションの場である。南方中国の広東は、飲茶文化圏ともいわれ、話すことと食べることが一緒くたになっている。その飲茶仕込みのレイさんの話には、ついつい耳を傾けてしまうピュアなパワーがあふれている。彼の話をすばやくノートにメモしたので、ここからはアラン・レイさんの話。
「人はそれぞれディフィレンス、独自のスタイルを持っている。それを受け入れない限り、友だちにはなれない。話すことによってお互いの舞台がわかる。だから君と話すのも楽しい。若い頃からぼくも旅が好きだった。旅をして、他の人の生き方、考え方をよく知り、友とそれをわかちあうことが大切だと思ったよ。でも日本人は嫌いだった。自分たちを一等国民だと思っていて、他のアジアは二等、三等という意識を持っていた。そういう冷たい人間が多かったな。」
「香港人のスピリッツ? ……とにかく平和を愛している。国を愛しているけれども、清の時代からイギリスに支配され、抑圧されている。1997年の返還を前にカナダやオーストラリアに逃げる人もいるが、ぼくは中国人として生きていく。何もできないけれど、中国人のアイデンティティーに共鳴する。西洋の教育を受けてきたけれど、中国人としての認識も失っていないぞ。香港人は働き過ぎのへんな動物だっていわれるけれど……でも、我々は人には頼らない。たとえ掃除夫をしても、どんな汚い仕事をしても自活の道を見いだす。金持ちでも、貧しくても、それに甘んじて楽しみを見いだして生きていく。人生は短くても長くてもハッピー。ワーキング(働く)、エンジョイ(楽しむ)、レスト(休む)の循環だ。」
「しょっちゅう落ち込むけれど、そんな時は、ビクトリア・ピークの山頂に登って空と話をする。エッセイを書いて海に流すこともある。流れ流れてそれがどこかに届くだろう。考えてみれば、落ち込みの材料は、現実の世界にいくつもころがっているじゃないか。でもぼくは賢いから大丈夫だよ。」
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