
「心を正しくして身を修め、己にうちかって礼にかえる」

左隅に、この赤い印章を押した。絵が乾いていないので少し滲んでいる。
●克己復禮(こっきふくれい)
この印章は、鹿港民俗文物館でいただいたものである。僕はスケッチをした後に、その現場でなんらかの刻印を欲するタイプである。絵を描き終えて、例によって、文物館の受付に行って、印章等がないかと尋ねてみる。係の人はスケッチを見て感嘆し、好意的にいろいろある印の中で、これがいいかな、こっちがいいかな、などと言っている。僕が選んだのはこの印章。八文字を絵のように組合わせている。スケッチの左下の隅に押印したのだが、まだ乾いていなかったので少し滲む。これもなかなかいい味だと僕はその場で満足したのだった。
だが、係の女性は気の毒がってくれて、少しもったいぶって「これをあなたにあげるわ」とこの証書をほほ笑んで渡してくれたのである。
なんだか科挙に合格した気分だ。額に入れて飾っておこう。
これは孔子の言葉である。己(おのれ)も、禮(れい)も、かみしめて日々を正しく過ごしていきたい、と思わせる。
と同時に、文字自体を重ねて遊んでいるところが僕はおもしろいと考えた。己が宙に浮かんで地上を見つめているような、或は己が何者かに弾け飛ばされていると言ってもいいのかもしれない。いずれにしても森羅万象宇宙表現の一つではないかと確信する。
絵を描くときっといいことがある、と僕は絶えず自分自身にも後進にも言っているのだが、この日もやはりいいことがあった、ということですね。
日本台湾友好☆東京神楽坂そして台北淡水がおもしろくなってきた。
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