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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2011.10.10
 SHANGRI-LA GLOBAL DREAM
218     
武蔵野美術大学近代文明論

《ネパール》
先週は島の学校の特別授業に行ってきました。瀬戸内海の島は大歓迎だったというか、盛り上がったんですが、その成果については、いずれ機会を見て報告します。
最近、ちょっと僕、悩んでいてね。みんな誰でも悩みがあると思いますが……。実は、贅沢な悩みなんだけれど、今朝も学校に来る電車の中でいろいろ考えていて、ここ一週間ぐらいずっと頭の中で考えていることがある。
というのはね、『住宅建築』という建築雑誌があって、そこで、連載を始めることになった。そのタイトルをどうするか、ということに想いを巡らせている。『住宅建築』という雑誌は、伝統的な建築も含めて、質の高い住宅を紹介している本です。僕の仕事も何度か紹介してもらっている。今度の連載は、そういう実際の建築作品とか研究レポートではなくて、もう少し遊びの部分というか、読者がほっとできて、人の暮らしの本質に迫るような紙面をつくりたいということなんです。というと、まあ、僕の中では旅の部分なんですね。それがいよいよ本格化して、今月15日の原稿締め切りなんだけれど、まだ何も出来ていない状態。スケッチと写真をメインにする構成だから、まあ出来るだろうと思っているんですが、タイトルが決まらないのね。連載のタイトル。ずーっと考えている。
編集部の意向は、生きている住まいの風景、こんなテーマでどうかなあ、ということなんですね。僕のテーマは、人が住むって何だろう、人が生きていくって何だろう、ということですから、ぴったりなのね。生きている住風景、そのタイトルでいいんですが、ちょっとまじめすぎるかな、という感じがしている。今朝の時点で有力なのは、以前の授業でも言ったかもしれませんが、英語でSHANGRI-LA GLOBAL DREAM、桃源郷を地球的規模で夢みるというのかな。それをサブタイトルにして、日本語で《シャングリラへの旅》にしようかなと思っているんですが、みなさん、どうですか。
それで延々と地球上のシャングリラを紹介していこう、シャングリラへの旅に向かおうと思っているわけです。
グローバル・ドリーム、地球的な規模で夢をみるというのは君らの世代ではとても大切なこと。僕は今だに夢みている。夢を捨てきれない。今日、話をしてもらう広瀬麻奈さんもたいへんな夢想家です。夢をみるということがないと、生活=ライフはおもしろくならない。イマジネーションがあるということは基本です。その次に、頭の中で夢をみたら行勤していく。行動力が必要。さらに、行動したらこれを自分なりの方法で表現する。僕は、絵を描いたり、写真を撮ったりしながら、僕なりの方法を見つけて、いや、見つけかけているんですが、これは個人個人によって違う。自分の方法論、自分が一番やりやすい方法を見つけていけばいい。
繰り返しますが、夢をみる力というのとても大事、それがエネルギー。行動力へ繋がってくる。その体験を表現する。
広瀬さんは今のところ、ちょっと失礼かもしれないけども、非常に夢をみる力というのがある。それで、若くて体力があって抜群の行動力がある。今、彼女の課題というのは、それをどんなふうに表現していくかというところだと思います。その彼女が君らの先輩ということで、これから話をしてもらいます。
僕のトレッキングより、さらに高いヒマラヤの壮大なスケールの写真が見られます。身近な先輩が世界を股にかけてやっている。しかも女性で一人で……。質問があったら後で直接聞いてみて下さい。
今日は待望の彼女の話でしたね。バトンタッチしましょう。
●歩くこと……
はじめまして。簡単に自己紹介なんですが、今から4年前に、この生活デザイン学科を卒業して、そのあと少し働いたんですが、翌年の12月あたりから、だんだん外に出始めて、現在に至っています。今回の旅は9ケ月半ですが、ネパール、インド、ヨーロッパを回って、先おととい、帰って来たばっかりなんですけれど、先生からお話しがあって、今日はその旅の話をしてくれということだったんですが、このテーマはものすごく大きいので、この一時間の中で話ができることではありませんので、ネパールの写真とあと、ちょっとした話だけしたいと思います。
旅はですね、結局、今も続いていて……。先生が言ったように、その夢というのはまだ実現していません。大学にいたころからも早く外に行きたいというのが夢で、それで行動に移ったんですけれど、具体的に何て言えばいいか、それは多分、歩くことじゃないかと思うんですよね。今日はネパールを中心に話をしますけど、その写真を見てもらう前に歩くことについて少し……。
歩くこと……。今までみなさんが歩くことを意識したことがあるかどうかわかりませんが、今回、22日間、ヒマラヤの中を歩いてきたんです。その中で、歩くということをものすごく意識し始めた。歩くことは、人間が持つ一番ナチュラルな行動なんじゃないかと思うのです。何か欲しいな、と思った時にまず一歩、こう歩きだす。赤ちゃんが初めて何か興味持ち出すと歩く。歩くということが人間の行動の中でとても自然な行動だと思うのです。
歩き続けて行くと、その人のリズムというのが出てくるんですよね。そのリズムをまずつかむ、それが大事なことだと思います。歩くことは、どこでも出来るんですけれど、その歩く旅の心地よさを最大に実現できるのが今のところ、ネパールだったということなんです。それで、山の中の話をこれからします。
ネパールという国は、みなさん知っていますか? 先生のお話しですでに知っているかもしれませんが、インドのちょっと上にある、ヒマラヤしかないような国です。そのヒマラヤをですね、今回、毎日毎日歩いてきたのです。そのトレッキングの中で何をやるかといいますと、その前に、トレッキングというのは、あのエベレスト頂上を目指すとか、8000級の山を目指すとか、そういうのではないんです。歩きながら、村を訪ねながら、遠くにヒマラヤを見ながら歩いていく。それを22日間やってきたわけです。
トレッキングは歩くしかない、歩くことがいわば仕事なんです。一日のスケジュールというのは、朝、陽が出ると起きて、そのままお茶を飲んで朝ごはんを食べて、午前中のトレッキングに入るわけです。大体3~4時間ぐらい山の中を歩いて……、登っては降り、階段のところもあるし、その繰り返しなんですよね。そして、お昼ごはんを食べる。午後、また3~4時間歩くんです。時々、午前中だけでやめたり、時々、高度調整というのがあるんですけれど、空気が薄くなっていくものですから、一日全く休みの日もあります。大体、夕方の4時ぐらいには歩くのをやめて、夕ごはんを食べて、それでもう寝るんですよね。それを22日間、それしかないんです。
もう、やっていること考えれば、寝て、食べて、歩いて、それだけなんですけど、その間に、歩きながら、自然に流れてくる風景があるんですよね。その中でふっと頭に浮かんだことから、いろんなことを思ったりする。
歩いている時というのは、一人なんです。山はきついですから、鷹の台の駅からここまで歩いてくるようにお友だちと話しながら、という感じではないんですね。やっぱり自分のリズムで歩いて行きます。人それぞれのリズムがありますから、だんだんに自然に一人になっていくんですね。
みなさん、えーっという感じになるかもしれませんが、歩いて旅をするということをまず心掛けて欲しいと思います。
今回はアンナプルナという山がヒマラヤの西の方にあるんですが、その周りをぐるっと回ったコースなんです。これから写真を見てもらいますが、その日程を時系列でセットしてありますから、風景の変化とか、低いところから高いところに行く変化とか、そこに住んでいる人たちの表情とか、注意しながら見て下さい。
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