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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2005.05.24
 一水寮の赤い薔薇2
20050525085704


一水寮の赤い薔薇にはこんな話があったそうです。
酒井草平くんたちの住む一水寮に不思議な赤い薔薇が咲く。大輪の花をたくさんつけるのである。しかも、年何回も。今も古い家を生き生きと飾っている。路地の奥にある家の人に「とげが危ないから切って」と言われることがあるので、時々これでは切りすぎかなと思うほど私は枝を切るのだが、切れば切るほど薔薇は元気になり、花も大きくなる気がする。しかも水をあげる人は誰もいない。土はからからに乾いて、いったいどこから水を取り込んでいるのかわからない。どうやって生きているのかなと思うほどなのに。
かつて、私たち家族が一水寮に住んでいた頃、その薔薇の咲く部屋には一人のおばあちゃんが住んでいた。身寄りもない人らしく、つきあいは宗教関係の人がちょっと強引に訪れてくるぐらいだったが、明るくて、いい人だった。昔、神楽坂の料亭で仲居さんとして働いていたそうだ。よく、送られてきた書類を読んで、と言われて読んであげたのだが、文字が読めないということだった。その薔薇は、彼女がどこかでいただいた小さな鉢に咲いていた花を植え替えたものが野生化したらしい。
彼女のもとには福祉施設の人が時々訪れ、病気で入院した後、養護施設に入る手続きをして、ある時そのおばあちゃんは一水寮から去って行った。今はもう亡くなってしまったのではないか。優しかったけれど、きっとつらいことも多かったに違いない彼女の人生を、今、花が美しく飾っているのだろう。(鈴木惇子)
コメント
この記事へのコメント
今もまだ、薔薇は咲いているのかなあ?
2006/05/08(月) 13:56:35 | URL | あおやぎ #-[ 編集]
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