
商店建築社/1999.9.1/A4版/180頁
著者/鈴木喜一
写真/宮本和義
本体価格4300円
残部なし
【著者の言葉】
1994年の秋から約3年間、『旅泊の空間』の取材で日本各地を旅した。世界中のどこにいっても基本的に素朴な安宿派の私にとって、ずいぶん恵まれた機会であった。今回取材した旅館建築の多くは近代和風建築と言われているものである。日本の伝統的な木造技術が最高潮に達したのは明治後期から昭和初期であると言われているが、その時代に建立されたものが母胎になって現在を生きている旅館建築たちばかりであった。どれもが豊饒で手応えのある本物の空間を味わわせてくれた。と同時に、当時の旅館当主、棟梁、職人たちが競って、訪れる客を喜ばせようと嬉々としてつくっていたのではないかと感じることができた。そして、それを懇切に守り続けてきた後続の人たちがいることも知った。
この単行本に紹介した30軒の旅館建築の他にも多くの優れた旅館を見せてもらった。部分的に紹介しているのはその時のものである。さらに取材先の旅館建築だけでなく、旅館街に繰り出して散歩がてらにまちを歩くことも多かった。すると、古い旅館建築はまちのランドマークであることにも気づかされる。まさにこれからのまちづくりの核になるべき位置に存在しているのである。
要するに、ここに紹介された旅館建築はどれも貴重な、かつ稀少な近代和風建築であることに間違いなく、この本が上梓されたことをきっかけに、これらの建築の価値がもっともっと再認識され、訪れる人に本当の空間の豊かさを味わってもらえたらと思う。そこには、古人たちが一生懸命、心を込めてつくった建築への夢が潜んでいるのである。これらの旅館建築が今、現役として立派に活用されているということが私にはうれしい。今後も生き続けてほしいと願わずにいられない。
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