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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2009.11.12
 それも徐々に、徐々に。☆interview●02
パリを拠点にユーラシア大陸・北アフリカを歩いたそのリスキーな旅の感覚が今につながっているんですね。
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助手を卒業してから、パリの国際芸術都市(Cite Internationale des Arts)のアトリエを拠点にして一年余り留学しました。毎年うちの大学から一人だけ行けたんです。とても恵まれていました。でもパリで学校に通っていたわけではないので留学というより遊学ですね。まずヨーロッパ全土の建築を見て回る旅を始めた。中近東や北アフリカにも足をのばしました。明日をも知れずという感じで放浪していましたから、何が起こるかわからない。相当リスキーな旅でしたね。今、僕が地球をくまなく歩いているのは、その時の旅の感覚が大きく影響している。ああいう時間は誰にとっても必要なものじゃないかな。ずっと仕事だけをやっていると、どうしても狭い世界に入っちゃうからね。
最初はアカデミックにね、ヨーロッパの古今東西の建築を訪ねる旅をやっていたんですけど、次第に、そういう建築史や建築論のカテゴリーからちょっと離れた、つまりそこからはみ出したところにあるごく普通の民家や、ヴァナキュラーな集落がいいなと思うようになった。建築家が存在しないアノニマスな建物、建築家が謙虚に消えているような建物が好きになりました。
ちょうどその頃、水彩でスケッチするのが心地よいという感じにもなってきた。旅を始めたころは建築家志望なんだからスケッチぐらいしなくちゃまずいな、なんて思って描いていたんです。それがある日突然、絵を描く快感に目覚めたんですね。描いているときは、時間がサーッと流れて無の状態になる。何も考えていないですよ。鼻歌なんかうたっているかもしれない。でも描き終えた後に、その風景と強い絆が生まれてくる。それも徐々に、徐々に。だから一日中、歩き回ってなにも描けなかった日はさびしかったですね。それは今も変わりません。

人間の原風景を訪ねる☆interview●01

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