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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2012.03.07
 13★トライシクル物語
今回のツアーでいろんな乗り物に乗った。まず、ジープニー(jeepney)。つまり乗合タクシーというか、乗合バスと言った方が正確だろうか。ボンネット型の古い小型貨物自動車を改造しまくり、カラフルに塗って存在感を示している。ぎゅうぎゅう詰めで乗ることが多いのでかなりしんどいけれど、これに乗らないと島民とスキンシップができない。

次にトライシクル。これにはずいぶんお世話になった。バイクの三輪タクシーのことである。人間の顔や性格と同様、よく見るとどれ一つ同じものがない。
バタネスではそれほどでもなかったけれど、ルソン島のビガンやラワグに行った時は、その数の多さに呆然とした。
「こんなにトライシクルがあるってどういうこと?」
「慢性的な失業率の高さ?」
「トライシクルに憧れているバイク好きの少年とかいるのかな?」
「それはいるでしょ。パジャック(自転車タクシー)の人はトライシクルに憧れて……」
「トライシクルはタクシードライバーに憧れる?」
雨ニモマケズ、風ニモマケズ、猛暑ニモマケズ、丈夫ナカラダヲモチ、慾はどうかな?
時々は怒ったりして、概ね静かに笑っているトライシクル。トライシクルにはトライシクルの数だけ多様な物語が存在するのだろう。


サブタン島行きの小舟。これは海面が舟よりかなり高くなるのでスリリングだった、というような余裕はなく、乗客も多いし、なぜもっと大きな船にしてくれないのかなあ、と隊員の誰かが呟いていた。サブタン島上陸の期待が大きかったものの、海を見つめて恨めしそうな顔をしてライフジャケットをつけていたのも事実である。天候もあまりよくなかったこともあるが、メンバーの心の中には暗雲がたちこめ、一蓮托生の舟が出た。
宮井山には吐き気が来るし、0-0隊員には上から物が落ちて来て、顔面上部を殴打してケガをするし、波は上下左右から襲ってくるし、一緒に乗っていた牛は立ったり座ったりと相当たいへんだったが、舵を取る船長は筋骨隆々、実にたくましかった。微動だにしないで足で櫓(ろ)を操作し、眼は海上を鋭い眼差しで観察している。その凛々しい姿を見て、このキャプテンなら大丈夫と、僕は安心して波の動きに身をまかせていた。僕たち以外の地元の人たちはといえば、やはり、キャプテンにすべてを委ねきって、眠っていたり、海をぼんやり眺めていたり、話をしていたりしていた。
後日、バタン本島でジープニーに乗っていた男が、柔和な顔だが、ショートパンツの足はがっしりとしていて、どこか船長に似ているなあと思ったら、まさしく彼が船長だったということが発覚し、人間の表情というのは、こうも違うものなのかと思い、愕然とした。なぜに、こうも人の表情が変るのだろうか? その理由を考えてみた。
一つ、キャプテンは鋭い眼光と人を安心させる温厚な表情を併せ持っていなければならない。
二つ、キャプテンは太くて逞しい足腰と喜一山に勝てる腕力を持っていなければならない。
三つ、キャプテンを見ていると、バタネスの厳しい自然に対峙する古くからの島民の知恵と、シャングリラ的な生活思想が織り込まれていることを感じる。

ジープニー、トライシクル、小舟。他にも、ヒッチハイクをした救急車やポリスカー、砂とセメント満載のトラック、馬車、リヤカー、自転車、タクシー、バス、双発プロペラ飛行機等種々様々な乗り物があった。おもしろがって少し強引にのせていただいた乗り物もあるけれど、なぜか断わられたことは一度もなかった。島民たちは至極当然のように僕たちをほほ笑みとともに迎え入れてくれたのである。素晴らしい島民たちだと感心すると同時に頭が垂れる思いでもあった。
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