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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2011.09.17
 228★五感を研ぎ澄ませる
武蔵野美術大学近代文明論
228★
ネパール/世田谷美術館ー2

実は先週の金曜日、12日に、つまり四日前に帰ることになっていたんですが、旅というのは、思い通りにはいかない。12日にカトマンズを発ってそのまま香港経由で東京に戻ってくる予定だった。これはもう一般的に言うと、揺るぎないスケジュールなんですが、たまたま偶然の不幸というか、幸運というか、ロイヤル・ネパールがストライキだった。飛行機が飛ばないんですよね。みんな困っちゃって、ちょっとパニック状態。そこで僕はニコッと笑ってみたりする。予定が崩れるということはわくわくすることなんです。この先いったいどうなるんだろう、という感覚がいいんだな。でも、みなさん忙しい人たちですから、帰国後のことをいろいろ考えてあせっている。それは僕も同じですけれどね。でも、飛行機が飛ばないんじゃどうしようもないですよね。バスポート盗まれたわけじゃないし、拉致されたわけでもない。とりあえず、あわてる、次に大きく構える。そして、なんとかなるさと諦める。最終的に、さてこれからどういう展開になるのかな、というように観る。
飛行機が飛ばなくなった、といっても僕は無力ですから立ち往生するだけでどうにもならない。で、言葉のわかる仲間が一人いまして、現地のガイドと、交渉してどうやらバングラデシュのダッカに飛ぶ、ということになった。インドの隣の国で、今は大変な雨季で、もう水だらけ、なるほどなるほどと思って飛行機の上から見ましたけれど。ダッカでトランジットになりまして、空港で現地のカレーを食べさせられて……、いや、いただきまして……、下痢をして。(笑)
これからどうなるんだろうと思ってしばらく寝て待っていたら、今度はバンコクに行くということになってね。バンコクで夜中に降ろされて、どこに泊まったらいいかわからない。僕はバンコクというのは東南アジアに行く時の基地にしている街でもあるんです。僕がいつも泊まってる安宿で、汚いけれどにいいかな? とか言って、みんなを連れて行ったんだけれど、ここは泥棒宿とも言われていて、Mホテルに行くといろんなものを盗まれるから気をつけろ、という噂がある。でも夜も遅いし仕方ないですよね、みなさん、断るわけにもいかない。
まあ、ヒマラヤのトレッキングをしていますと、とんでもないところに泊まるんですよ。テントに泊まったり、とてもプリミティブな素朴な宿、三和土の土間があったり、草葺きの家とか、石積みの壁や屋根、ロッジと言いますけど、電気も何もない、ローソクだけ、せいぜいケロシンの灯り、というようなところに泊まっていますから、タイのMホテルがヒッピー宿だと言ってもかなり豪華に映る、だから大丈夫だろうと思って、連れ込んだ。バンコクで夜も遅かったんですけど、近くの屋台でタイ料理を腹一杯食べまして、そして旅の総括をちょっとやったんです。いい感想が出てきました。その感想はいずれまた。つまり仕事で行った、と言ったんだけれど、ネパールでは仕事の話は一切しなかったんです。みんな、ただひたすら歩いただけの一週間、歩き続けて足が壊れた人もいる。

僕はいろんな場所を旅するんだけれど、言葉がほとんどできないんです。コミュニケーションの手段というのは英語のカタコトです。わりと現地にすぐ馴染みやすい体質だというふうに回りから言われてますが、まあ、言語の上ではそうでもなくて、最低のレベルの言葉をその場で覚える。それぐらいしかわからない。
だが、手ごたえっていうのはいつもあるんですよ。これはどこにいっても、中国に行っても、韓国に行っても、タイに行っても、インドに行っても、ネパールもそうですが、伝わる。
言葉が伝わる。言葉がしゃべれないから伝わることもある。これはちょっと話せないひがみも入っているかな。話せればもっと深くわかりあえるのに、いろんなところに生きてる人の人生も分かち合えるのにと思うこともずいぶんあります。でも、話せなくて残念だなと思う反面、言葉がわからなくても大丈夫、という感覚もあるんです。そのぶん、視覚、聴覚、味覚とか、嗅覚とか、あと触覚かな、つまり五感を研ぎ澄ませて感じ取る、そういう訓練をしているのかもしれない。同行のメンバーもほとんどそうだったと思います。つまりひたすら歩いていた。


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