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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2010.08.14
 追悼●田中文男棟梁/神楽坂建築塾講義02
田中文男棟梁/神楽坂建築塾講義/2001.3.11

02●職人に至る三つのプロセス
人間がものを覚えるには三つのタイプがあると思うんです。それらのうちの一つだけをやっているのが大学であるし、逆にわれわれが受けたような丁稚教育もその中の一つだけをやっているんです。
第一は「慣れて身に付ける」ということです。14 歳で丁稚に入ったときから、続けています。ある年になると独立した職人として認めてもらい、お金をとれるようになるわけですね。ものの本質を見極めるために切磋琢磨しなければいけないんですね。「流行と不易を判別し、部分と全体を把握する」ということです。私が50年前に親方に教わったことは今はほとんど使わない。それは「流行」だったかもしれない。しかし変わることがない「不易」なものはある。「板を目違いなく削る」だとか、「逆目はどうやって止める」だとか。超仕上鉋のようないい機械が出てきても、調節をするのは人間だから、基本的な台鉋の理屈がわからない奴がやっても、うまくいかないですね。鉋屑は厚いし、逆目も止まっていない。ものの本質には、流行と不易があるということを理解してもらいたい。
仕事を一緒にして困るのは、「思ったことをする」人。熟練ですからきれいな図面を描く。例えば石を割る時など、やけに細かい計算式ばかり立てる。しかし何タイプに分れて、どこで「逃げるか」ということ、つまり全体を把握していない。「ミリ以上の単位はオレの目には見えないから」って言うんです。「オレの道具にはノギスはないんだ」ってね。数字じゃないんだ、実際の仕事は。「慣れて身に付ける」ためには、忍耐力、積極性、情熱そして展望(ビジョン)を持つこと。それを持続させることが大切です。
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