FC2ブログ
旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2010.05.22
 72●風景が開ける
困るけど、困らないという感覚が大切ですね。例えばスケッチをしていて子供たちに囲まれた場合、10人がいると、一応10人を見渡す、だれがボスかな、どの人が一番話がわかるかな、と観察しながらこう、筆を動かして描いている。言葉はわからない。僕は右利きですから、ということもないけれど、通常、一番右で見ている人を味方につける。そして例えば、左側にしっかりしていそうな女性がいるとすると、あなたはこの中で一番年上なんだから頼むよ、って目で言うんですよ。横綱の露払いの役目を彼らに与えるんです。
僕は一生懸命、あなたたちの村を描いている。それだけなんだよ。そのことをお願いしますね、というような意味を込めて描く。それでも、あんまりうるさいと、ちょっとそこを今、描いてる、ここが見えない、と静かに言うわけです。でも相変わらずキャアキャアやっている。しょうがないなあと思いつつ僕はひたすら描いてる。すると、そのうちに、左手の彼女がやっばり、仕切るんですね。この日本人はちゃんとした日本人だってね。私たちの村を、描いてくれているんじゃないかと。水がはけたように僕の前に風景が開ける。後ろに一列に並んで、僕が描いている風景を子供たちが見守る、という形になる。そうなると絵は気持ち良く描ける。しかも、ひとりで描いてるんじゃないんですよ。もう10人で描いているという感覚。そこから何が生まれてくるか、どういうストーリーが生まれてくるかというのは、もう、無限なんです。
スポンサーサイト