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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2009.10.03
 武蔵美近代文明論☆07●なんにもない場所
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マンダレーの岸辺

●なんにもない場所
これと似たような話で、タイのバンコクに行った時のこと。その時はタイに行くのが目的じゃなかった。隣の国のビルマ、現在ミャンマーになっていますが、ビルマに行ってみたくて、ビルマのビザとか飛行機の切符を取るためにトランジットとしてバンコクにしばらく滞在していた。
いよいよビルマに飛べるんだっていって、タイのドン・ムアン空港にタクシーを走らせていた。そうしたら運転手が話しかけてきて、「どこに行くんだ」と言うから、「今からビルマに行く」と答えたら、運ちゃんがちょっと僕をパカにしたのかな、ちょっと吹き出して、「あそこには何もない」って言うんだよね。ビルマに行ったってなんにもないよって、だけどバンコクにはすべてがあると言う。
つまり、バンコクというのは日本で言えば東京、インドシナの東京みたいなところ。近代的な設備もあるし、超高層も建ってるし、それと裏返しのような形でスラムがあったり、歓楽街があったり、北部にはゴールデン・トライアングルを控えているから、ハッパもあれば、売春宿もあれば、おいしい食事もある。お金も結構動いている。インドシナの経済基地ですからね。いろんな意味で活気のある街。だから、バンコックにはすべてがある。それに比べて、隣のビルマにはなんにもない、というのが彼の答えになる。
「いつ来たんだ」「3日前に」「やめとけ、行くことないよ、タイにゆっくりいた方がいいぞ」というようなアドバイス受けることになる。その運ちゃん、わりと野卑な男だったな。だからということもあるんだけれど、僕がその時、腹の中で思ったことは、この男が何もない、と言ってる場所なら、きっとすべてがあるなって確信していた。
そんな感じでビルマに行った。そしたら、本当に彼が言うようには何もなかった。彼の言ったのは、ある意味で事実だった。しかしある意味では事実じゃなかった。やっぱり、すべてがあったって僕は思った。だからそういうこと、わかるかな。なんとなくわかってくれればいいんだけど。

武蔵美近代文明論☆06●すべてがある場所
武蔵美近代文明論☆05●時間どろぼう
武蔵美近代文明論☆04●小さな島に
武蔵美近代文明論☆03● I can be myself
武蔵美近代文明論☆02●静寂感とカオスと現実
武蔵美近代文明論☆01●カルカッタ

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