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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2009.09.29
 武蔵野美術大学近代文明論☆05●時間どろぼう
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●時間どろぼう
これからは時間っていうのはもう少しちゃんと考えなくちゃいけない時代にさしかかってきている。時間をどんなふうに使って生きていくかということは、君たちの重要なテーマになってくるだろうと思いますね。だれにもある自分の時間が奪われているというような感覚。
実は昨日もちょっと病院に行っててね、その間、病院のあまり感じのよくない待合室で、そのゴールデンウィークの島でふと思い出した本を読んでいた。この本なんですが、読んだことのある人いるでしょ、『モモ』っていう本ね。
童話なんだけれども、小学校5~6年生向きって案内されている。この『モモ」という本、子供の時分に、読んだことのある人いるかな。読んだことある人、どのぐらいいる?
随分いるね。ここには時間のことが書いてある。子供の頃に読むのと、大人になってから読むのと全然感覚が違うだろうね。僕は大人組なんだけれど。読んだことのない人は、読んでごらん。ちょっと社会の動きとは逆のベクトルの話になるけれども、読んだことのある人はもう一回読んでみると鮮明になることがある。
例えばね、「時間とは即ち生活である」と書いてある。時間っていうのは生活だ。生活とは何か、人間の心の動きだっていうこと。その部分だけの言葉をとらえてもまずいかもしれないけれど、全体を読むとわかる。人間の生活の豊かさというのは時間と密接にかかわっていて、その中での人間の心の動き、エモーショナルな気持ち、そういったところにあるんじゃないか。自分の時間という問題をひとつの大きな軸に据えて考えていかなくてはいけない、って言っている。
僕が今から10年くらい前に旅行した時、旅行をすると必ずこういう大学ノートに日記を書くんだけれど、日記の冒頭に、朝起きると起床時間を書くの。それから天気を書くのね。その隣にある数字を書いたんだ。どういう数字かっていうとね、例えば、11256、その次の日には11257、そういう数字を書いた。何の数字かわかる人いますか?
「日記を書き始めた日からの数字……」
違うな。石野さん。
「手持ちのお金」
はずれ。じゃ、もうひとり聞いてみようか、平山さん。
「距離」
僕が生まれた日からの日にちなのね。日数。だから、当時30歳くらいだったってことになるね。10000日というのは約27歳、20000日っていうのは約54歳。30000日が約81歳。人間は生まれると死があるから、平均30000日ぐらいだろうって僕は思う。そういうことを意識しながら、11256、11257という、日記の中でひとつひとつ書いていく、という数字。そうすると、今日一日というのがリアリティーを帯びてくる。人間としての生の中の貴重な一日だっていうこと。
それを『モモ』では、何万秒とか、何億秒っていうような、秒数でやっている。時間の貯蓄銀行というのが出てきて、時間をどんどんどんどん人間の社会から奪っていくという物語なんです。人間が人間として生きることを可能にする時間がだんだん失われてきたというのが『モモ』の中心課題なんです。

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