FC2ブログ
旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2009.09.14
 齊藤祐子の今成塵庵
20090914151938.jpg
日干しレンガをつくる。土を足で踏む。

土と建築/齊藤祐子●講義録抄20090912
益子の今成窯を初めて訪ねた時,何より印象的だったのは、北側にのびやかにひろがる麦畑と水田の緑であった。敷地は大きなケヤキと竹林に囲まれた緩やかな北斜面。南と北の緑をつなぎ,住居の中に取り込むことを考えた。南北軸に住居を配置,西側に個室と水回り,東側には南から北まで開放できる場をつくり、風が抜けるように計画。既存の仕事場との間は,屋根だけをかけた土間でつなぐことにした。
その土地に潜在する要素は、つくられたものを通して顕在化されていく、ということを私は念頭においた。
もう一つ,土を仕事にする陶芸家の住居の計画に、益子の土を生かすことを考えた。最初は壁に土を塗ることを提案したが,現場を進めるうちに、〈土のワークショップ〉で日干しレンガをつくり,建築の一部を仕上げることにした。学生をはじめ様々な人が、小さな家をつくる現場に入り,職人や土地の人から話を聞きながら,かつては人から人へ伝えられていたことを、あらためて学ぶことになった。

土を足で踏む
納屋から久々に持ち出された押切で藁を刻む
薪でごはんを炊く,火の扱い
水平を取りながら日干しレンガを積む
手で土を塗る


何かをつくりたいという思いだけで,何も身につけてない参加者に、棟梁の片岡さん、左官の堀中広さん、清さん,近所の相田さんは、日常の中であたりまえに伝えられてきた方法を根気よく教えてくれた。そして,住居を全面的に開放してワークショップの場をつくったのは、施主の今成さん,美津枝さん。家をつくる現場は、もっと開かれた場所であったような気がする。その場所に新しい家が建つことを、地域の人たちが祝い,楽しみながら眺めた。職人の仕事,ものができていくプロセスが子供たちにも驚きと共に伝わってくるのが、現場の自然な姿であった。
安全管理の名目で、現場がかたく閉じることで,かたちができるプロセスから学ぶ機会を失って久しい。今回,現場をひらく試みから、人から人へ伝えられることの大切さをあらためて実感させられた。
1997年初夏,古い家を解体した木材で、のぼり窯に火を入れて現場は始まった。夏,日干しレンガをつくる〈土のワークショップ〉にたくさんの人が集まり,その年の12月には新しい家での生活が始まった。
あれから12年、いろんなことがあったが、住むことは、つくり続けることであり、そうした生きた営みの集積が建築の形をつくり,建築は生き続けることができる、と改めて実感している。(さいとう・ゆうこ)


スポンサーサイト