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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2008.05.04
 世話焼き長屋
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『世話焼き長屋』(縄田一男編/新潮文庫)

ふーらり旅では読書も楽しみの一つだ。今回は『世話焼き長屋』をじっくり読んだ。収録作品を順に紹介すると、
・池波正太郎○「お千代」
・宇江佐真理○「浮かれ節」
・乙川優三郎○「小田原鰹」 
・北原亞以子○「証」 
・村上元三○「骨折り和助」 
 
どれも読みごたえがあるのだが、極めつけは三番手に登場する乙川優三郎の「小田原鰹」だったように思う。選者あとがきの中で縄田氏が書いているように、解説を先に読む人がいたら「どうか本文を読んでいただきたい」短編なのである。
読者はまず池波正太郎の手際の良い文体とプロットに舌を巻き、続いて「浮かれ節」の世界に爽快感を感じるだろう。冴え渡った会心作「小田原鰹」で一挙にこの本の深みに入り、次の「証」では〈芸術〉とは〈生術〉だということを知らされるだろう。最後に登場する村上元三の短編もこれらに輪をかけた逸品で裏長屋の人間の心意気がずしんと響く。
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