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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2008.03.22
 戸崎将宏のふーらり書籍情報
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本書は、「日本辺境をこれといった目的もなく、寝袋持参でのんびりと風にのって旅をする」体験を、軽妙な語り口と味のあるスケッチで共有することができるものです。
「ひとりぼっちで津軽半島の海に向った」では、黒石市中町地区にある藩政時代に考案された「こみせ」を取り上げ、「雁木」とも呼ばれ、「通りに面した木造のアーケード」であり、「歩行者は冬の吹雪や夏の日照りなどを避けながら、通勤や通学がてらに買物もできる」と語っています。
「島のゴールデン・ウィーク」では、瀬戸内海の小さな島の「飛島(ひしま)中学校」に忍び込んだ著者が、そこに掲げてあった中学校の校訓である「まじめに、やさしく、たくましく」という言葉を「まさしく人間としての基本だ」と思いつつ黒板に書いた後、「赤、黄、緑、のチョークを見つけて、三本まとめて手に握り、さらに一回り大きな字で、≪おもしろく≫とカラフルに書いて」、冒頭に「新校訓」と付け加えて帰って行ったエピソードが語られています。
このエピソードには後日談があり、著者が、学校宛にお詫びの手紙を著書を添えて送ったことをきっかけに、島の中学生との文通が始まり、3ヵ月後には、島を訪問しての特別授業を行なったことが添えられています。
「揺られ揺られて小笠原」では、「ふーらり」と小笠原に行きたくなった著者が、「それなら無人島歩きの達人、安井隆弥さんに会ってボニノロジーの話を聞いてきて」という宿題を出され、「ボニノロジー」とは、「無人島の無人がムニンとなり、さらにボニンとなまっていったらしい」という語源が語られています。
また、この島の島民が、
(1)旧島民:戦前この島に住んでいて、返還後に帰島した
(2)在来島民:かつてここを捕鯨の基地にしていた欧米系住民
(3)硫黄島島民:硫黄島に住んでいた人たちが返還後に父島に住むことになった。
(4)新島民:返還後に来島した移住者で3年以上たっている人たち
(5)新々島民:移住3年未満の人たち
の「5つの島民」によって成り立っていることが紹介されています。
「西海に浮かぶ弓なりの小島群へ」では、五島列島を訪ね、数多くのカトリック教会を建てた長崎の棟梁建築家、鉄川与助が、「一方で敬虔な仏教徒であった」と述べ、「信者からすれば、いくら鉄川に実力があったとしても、異教徒に神聖な祈りの空間をつくらせる」という矛盾に「双方で複雑なつらい思いがあっただろう」と語っています。
「神楽坂ふーらりスケッチマラソン」では、1時間のタイムリミットを設けて「ふーらり絵地図」を描き、ポイントとして、
(1)ある程度のバランス感覚は必要
(2)歩きながら描く地図は結構リアリティがある
(3)ポイントをうまく描きこめるとよい
(4)地元の人に声をかけられたら地図のテイストは確実に上がるような気がする
(5)1時間で着色イラストつきの地図はやっぱりきつい
の5点を挙げています。
「風景の中に閉じ込められて」では、「一人で国境を越えること」という「漠然とした目的」から、下関から釜山、三千浦、紅島と船でさまよい、「わざわざ旅に迷うための意識下の行動」だったと語っています。
「『おのみち旅大学』めざして西へ」では、著者の出身地の静岡を取り上げ、「黒ハンペンのフライが無性に食べたかったから」という理由で、人宿町の居酒屋「千寿」を紹介しています。
そして、尾道で1年ぶりに入った「自由軒」のおかみさんが自分のことをかすかに覚えてくれた理由を、「おでん鍋のスケッチをしていたから」だとして、「スケッチをすると、人の記憶に残りやすいのである」と語っています。
「僕の樺太ふーらり旅」では、ロシア語を何も知らないまま、「まあ、なんとかなるっぺ」と訪ねたサハリンで、「生活風景には実際、驚かされた」として、「日本の戦後あたりにタイムスリップした感じ」で、「民族のるつぼで、ロシア人、朝鮮人、日本人、アメリカ人、それらの混血人といった具合」で、著者が知り合った日本人女性らの「凄惨な人生を思えば僕らの苦労はたいしたことがない」と感じたことを語っています。
「水郷佐原美味まち建築紀行」では、小野川沿いの常宿にしている「木の下旅館」を取り上げ、船宿として知られ、「佐原演芸場があった時代は旅芸人旅館でもあった」こと、現在でも、浪曲師初代寅三、画家の杵の屋長少、役者の山岡久乃、最近では榎木孝明なども泊まっていると紹介しています。
本書は、僻地を「ふーらり」と旅したいと願っても叶わない多くの人にとって、ますます旅したい気持ちに火をつけてくれる一冊です。

■ 個人的な視点から
日本中を「ふーらり」と旅する著者の姿には憧れます。願わくば自分も旅したい衝動に駆られてしまうところですが、とりあえず、黒ハンペンを買うなら、新静岡センター地下の「しずてつストア」で10枚入りを買うと安いですが、美味しい黒ハンペンは、駅の南側にあるようです。

■ どんな人にオススメ?
・日本中を「ふーらり」と旅したい人。
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