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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2007.11.29
 Cite internationale des Arts
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もう二〇年も前のことになる。一九八〇年初夏から約一年あまり、僕はパリのアトリエ(国際芸術都市/Cite internationale des Arts)を拠点として、ヨーロッパ各地、北アフリカ、中近東をうろうろと旅していた。
芸術都市の建物はパリ四区、セーヌ河に臨んで立地し、しかも、マレー地区と呼ばれる比較的地味で味わいのある古い街区を背にしていた。利用していたメトロはポン・メリーあるいはサン・ポール。
このあたりは一四世紀から一九一四年以前の建物が約七〇パーセントを占めているという場所である。石畳の街路に足を踏み出せば、中世以来の生活を刻んだ分厚い壁が長い歴史を伝えている。
一ケ月から二ケ月位の小旅行をいくども繰り返していた僕は、パリに戻ってくるとなぜかほっとした。アトリエではよく窓からセーヌ河を眺めていた。そこにプラタナスの並木があって、その葉が黄色くなったり、散って喬木となったり、新しい芽が少しずつ出て、やがて緑葉になっていく...、というような自然の細かな摂理を観察していた。
以後、僕の旅は中近東からインド、そしてアジア奥地へと道筋を変え、ヨーロッパから遠ざかっていたのだが、パリには一九九七年の春と一九九九年の秋に訪れている。パリに行くと僕は二〇年前と同じ道をいつも歩く。そして二〇年前に入った同じカフェでエスプレッソを飲み、同じレストランでシュークルットを食べてワインを飲む。昔日の記憶をゆらゆらと重ねているのである。


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