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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2006.12.28
 神楽坂に残したいパウワウ
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(実測/小林聡浩)

神楽坂の「巴有吾有」(パウワウ)が消えてゆく、という衝撃的な噂を聞いたのはもう二年ほど前になる。たびたびその風聞が流れるので、その都度、マスターの林功幸さんに「そんなことないよね」と質問し「大丈夫だよ。鈴木君」という答えを確認してきた。ところが2006年の秋、ついにと言うべきか、「巴有吾有」から一時閉店を知らせる丁重な手紙を受け取ってしまった。
そこには「東京理科大学によるビル化計画が立ち上がって」と明記されている。巨大なビルがまたまた神楽坂に建つというのだ。「巴有吾有」はその計画の中心部に位置しているのである。もう巨大開発はやめてくれないか、神楽坂が滅茶苦茶になってしまうではないか、神楽坂の文脈をどうしようというのか、というまちの切実な声があちこちから聞こえてくる。
神楽坂の文化を体現している喫茶店「巴有吾有」を、なぜ東京理科大学は大切にしないのだろうか。建築学科も有する最高学府が「巴有吾有」という魅力的で居心地の好い空間を、せめて新しいビルの計画に取り込むぐらいのことはどうしてできないのだろうか。「巴有吾有」は神楽坂の宝であり、「巴有吾有」があるから魅力的な神楽坂なのである。
一時閉店とはいったいどういうことかと言えば、神楽坂のどこかで「巴有吾有」を再開したいという林功幸さんの意思表示だろうと私は推測する。あるいはビル化計画が頓挫して「巴有吾有」は何事もなかったかのように存続し続ける、といったようなコペルニクス的展開も私は想像したくなってくる。
ともあれ「巴有吾有」が神楽坂の景観から消えてゆくのは許せないことである。この思いは神楽坂を愛するすべての人の共通な思いであるにちがいない。

【林功幸さんの言葉】
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