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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2006.09.17
 鈴木悠☆INTAVEW☆2005年冬
01●どうして建築をやりたいと思ったのですか

自分の周りの環境はどうなっているのかということに興味を持ち、特に住環境に焦点を持つようになりました。電車に乗るとよく思うのですが、なぜこの窓から見える風景はこんなにも面白くないのだろう。僕がこの風景をもっときれいにできたらよいなと思い、そこから建築をやりたいという気持ちになりました。小さな頃から木造住宅で育って来て、でも周りの家はほとんどプレハブで構成されている。「住」というのには住むということ以外に文化的な意味などがあると思います。それを突き詰め、具体的に表現するには建築家になることが一番だと思います。日本人は「衣」・「食」についてはとても機敏で豊富な知識があり、とても素晴らしいと思いますが、「住」を知らない人が大半だと思います。それを伝えるためにも建築をやりたいです。

02●好きな建築はどんなものですか

生活するのに家が必要だから作った、というようにその地に住む人が、その地で採れる材料を利用して建てた建築にとても心を引かれます。つまり、建築家ではなく素人の作った建築です。野暮で粗荒だけど、そこには生活上必要最低限の設備、自分好みの間取り、場所によっては宗教。そのようなものが混じりに混じって自分だけの家が出来る。私はそれが建築の原点であり、美しい建築をつくる元であると思います。

03●尊敬している建築家・好きな建築家はいますか

尊敬している建築家は、父、祖父をはじめ全ての建築家を尊敬しています。好きな建築家はフンデルトヴァッサー・伊東忠太・藤森照信さんです。自然と建築の関係が如実に出ていて、両者が和気あいあいと暮らし、ユーモアもあって本当に素晴らしいと思います。また、自然と建築の共棲という点で彼ら建築家がまさに野暮で粗荒、でも洗練されていると思います。僕もそんな建築家になりたいです。

04●建築学科に入ってどんな研究や制作をしたいですか

建築についての歴史や技術を専門的に学び、現代日本、世界各国の建築状況を幅広い知識の上で冷静に考察したいです。一般の人が家に対してどのような思いがあるのかを調査してみたいです。また、その結果から分かったことがなぜそのようになったのかを調べたいです。今、私たちに必要な住宅の設計をしたいです。

05●趣味は何ですか

暇な日は地元を散歩するのが好きです。街の変化を見るのは好きなのですが、変わり過ぎてどこか寂しくなる時もあります。連休は旅行に行くのが好きです。色々な地を見て歩きたいです。

06●神楽坂建築塾というのはどういう内容の塾ですか

建築に対する新しい知識や驚き、また講師のみなさんが世界中を旅した写真などを実体験と合わして建築家の視点から色々と語りかけてくれる場であります。また講師、塾生の方々とのコミュニケーションで、実際の現場での問題点や、建主さんとのトラブルが生に聞けます。塾生は、日本各地から集まることから、気候の違いがどれだけ建築に影響を与えるかなど様々な情報が行き交い、知らないことを塾生みなさんがおもしろおかしく親切に教えてくれます。プロの建築家の方々にとっては互いの建築観をぶつけ合ったり、少しでも建築のことを深く知ろうとする絶好の場所となっていると思います。

07●父親のこと、鈴木喜一建築計画工房のことをどう思っていますか

鈴木喜一、鈴木喜一建築計画工房にはとてもたくさんのことを学ばせていただいています。建築は設計だけでなく、設計者、施工者、クライアントとの関係性も非常に重要で、それを身近に感じることもできます。もちろん設計から施工までのプロセスをトータルに見ることができるのも貴重な経験です。先日、自分が作成した軸組模型を持って現場に行くと、実際に建っているものはとてもしっかりつくられていて、でもそれは模型を大きくしたものであるのだから、模型一つをとってもそれだけで建築が成り立つということが分かりました。大地に建築が建つまで何段もの階段を登って辿り着く、そのプロセスに直接関わり合いを持てることはとても貴重な体験だと思っています。そしてなによりも大切なものが、建築家としての哲学を直接叩き込んでもらえることだと思っています。ただ、住宅を設計しているだけでは建築家ではない。そこに自らの建築に対する哲学が現れるから、おもしろいのであって必ずそれが必要なものだと思います。

08●大橋富夫さんの助手をしているとありますが、何をしているのですか

撮影のための周辺環境を整えることをしています。ボディー、レンズ、フィルム、三脚の交換や移動時においての荷物運び、それから写真に写る構図の整備です。助手と同時にたくさんのことを学ばせて頂きました。写真撮影の知識はもちろん、建築写真家から見た建築のおもしろさや美しい見方、また建築の難しいところ。大橋先生の写真作品にはよく人や自然が映り込んでいます。建築にとっては自然や人は脇役。でも脇役がいなければ建築の存在自体が無意味になってしまいます。

09●東チベットはどんな印象でしたか

東チベットはきれいなところでした。川があり、山があり、人がいて、東京で暮らしていると、この地はとても裕福な風景の土地だと思いました。でも、村の人との談話会などを通し、東チベットのたくさんの問題点を知りました。森林伐採、ゴミ問題、それらが引き起こす水質水量問題。私から見た東チベットは豊かな大地でも、先住していた方々見れば大分緑が少なくなったそうです。よく見ればわかることなのですが、周囲を囲む山々は木を伐採され小さな草が表面を覆っているだけ、土砂崩れが多い土俵は木を伐採したことにより強度が弱くなっているからです。たくさんの問題点を目の当たりにして、ただそれを思うだけでなく、どうすれば昔の姿に近づくことが出来るのだろうか?と考えていきたいです。

10●将来どういう方向に進みたいですか

伝統的な建築の再生・研究をやりたいです。そこから学んだことを現代の建築に反映していきたいです。主に住宅の設計をし、人の生活やその人に適した空間というのを提案実行していきたいです。

11●平良敬一塾長に影響され、建築の新しい見方を知る、とありますが具体的にはどのあたりのことでしょうか

平良塾長に言われて一番心に残ったのが、建築の哲学的思想です。ただ、自分が好きな建築を設計するだけではなく、時代の社会的背景を取り込んで今必要な建築を自分なりの表現で設計する。何か一本自分の建築に軸を作り設計を行う。建築自体が自分の哲学の形となる。自分なりの解釈なのですが、このように解釈しました。

12●建築家にとって一番大切なことは何だと思いますか

建築家にとって一番大切なことは、周りの景観との同調だと思います。我を主張するのはとても大切なことだと思いますが、その場その場の環境を考え適したものをつくる。きっと昔からそのような建築がつくられてきたのだと思います。ブティックやランドマークの建築ではなく住宅を設計する上ではそれが一番大切なことだと思います。また、人とのコミュニケーションも同等に建築家にとって大切なことだと思います。人が暮らす所、人がいる空間を設計するにあたって、人との会話や接し方からたくさんのことを学べると思います。

13●旅と建築について聞かせてください

たくさんのものを見て、たくさんの人と接する。とても大事なことだと思います。研究というより体験をして、頭で理解するのではなく体で感じる。人という生き物は頭がよいから頭で理解・解析したことは否定と肯定に分けてしまうと思います。でも本来はそれではいけないのではないだろうか。他の地から風土と習慣を体で受け入れることが大切であり、頭で考えてはいけない。それは自分の中での尺度で比較してしまうから。自分を拡げるためにも世界中を見て歩くのは大切なことであると思います。建築を含みたくさんのことを学べることだと思います。
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