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旅する建築家
鈴木喜一の

大地の家
2006.02.14
 西品川の家の夢と現実の挟間で。
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【T邸概要】
東京都品川区西品川に位置するT邸は、比較的広い屋敷地を有している。その敷地のほぼ中央に、大正時代に建てられた古い建物が現存していて、創建時のものと思われる青図も残されている。
以来、最近まで漸次、増築、改修、耐震補強等の工事をしてきたが、この度、全面的な保存再生工事を実施することになった。創建時より幾重にも重なった時代層に新たな時間軸が加わるのである。
ことの発端は、施主HTさんの長男、KTさんが、神楽坂建築塾の塾生であることに起因する。「古い建物を残しながら或いは再編しながらの改修工事はできないものだろうか」というKTさんの着想は建築塾に学んで培われたものである。加えて、家族全員がこの家に対して捨てがたい愛着を抱いていたことが本工事の原動力と言っていいだろう。生まれ育った家を、壊して新築するというのではなく、古きを活かして改築・改修するということは、まず尊い行為と英断であり、そのことを専門としている私としてはうれしいことだった。保存行為は、施主のある種のロマンチシズムを根底とした精神によって支えられるものだと常々思うからである。その結果、以下のことが付随して言えると思う。
・古い建物はそこに歴史の厚みを読みとれる。
・保存とはより質の高い環境をつくりだす一つの方法。
・美しいもの、それは全体構成に欠かせない。
・古い建物はその家の記憶と一体であり、未来と過去をともに夢想できる。

2004年12月9日、当工房が西品川の家を訪ね、施主夫妻にお会いし、正式に調査依頼を受けることになった。屋敷地はJR東海道新幹線及び横須賀線のほど近くにあり、その騒音に悩まされる場所でもあることが確認された。調査はまず、耐久性・劣化状況等現況を正確に把握して記録し、さらに同建築物の改修工事にあたり構造・意匠上の設計に資することを目的に実施された。
調査業務は改修工事計画を前提に進められたが、東京都建築安全条例(2005年4月1日から施行)が立ちはだかった。防火規制が強化され、伝統的な木造建築が建てられないような条例なのである。
こうした状況下で、今後どのような改修・増築計画が成り立つか、いま、その方向性を綿密に検討すべき段階にさしかかっている。
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